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2004年09月02日 (木)

自分の行為の政治性、文化の政治性を意識してみる(本:2004/09/02)

<読了>
岩渕功一編『アジア理解講座3 越える文化、交錯する境界 トランス・アジアを翔るメディア文化』(山川出版社

テレビ番組や映画・音楽・マンガ・アニメなどが「アジア」でナショナルな境界を越えて流通する状況を、ありがちな「日本文化」への自己満足的な称揚や「文化交流」への過度な期待に陥ることなく、文化の政治性をよく意識して非常にまっとうに現場からわかりやすく論じようとする論考が揃っていて、大変優れた本でした。自分の周辺に引き寄せて考えてみると、テレビ番組などのコンテンツを買ったり逆に売って稼いだりする時に、その行為の政治性を意識しているのとしていないのとでは、結果は変わらなくても、自分の行為の意味に自覚的だという点で意識している方がいいに決まってるわけで、状況を俯瞰するそういう眼は常に忘れないようにしようと改めて思いました。それにしても、“日本のアニメ”が世界の市場で売れている状況を、「日本文化」の優秀さの証拠のように語る語り口はいっこうに無くなりませんね。僕は大学の卒論でそういう語り口を批判して、それからもう4年経ってますが、最近『Yu-Gi-Oh! The Movie』がアメリカで公開されてヒットした時のテレビのニュースなどでも全く同じ形式の語りが横行してました。まあそう言いたい気持ちはわかるけども、そういう風に語っちゃうと、まさにそのコンテンツ自体の力とか、コンテンツを流通させるための努力やヒットを生んだ市場の状況などを見ようとしなくなってしまうわけです。そんなに物事は単純ではないはずだから、魅力的な説明に飛びついて思考停止する前にもう少しよく考えてみましょうよ。特にメディア関係の仕事をしている人は。

投稿者 enyu : 2004年09月02日 23:59

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