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2005年11月12日 (土)

『国語教科書の思想』読了(本:2005/11/12)

<読了>
石原千秋『国語教科書の思想』(ちくま新書)

小・中学校で広く使われている国語教科書をテクスト分析して、そこに(意識的かそうでないかに関わらず)隠されているかなり偏ったイデオロギーをあぶり出した本。「国語」という教科が、ある一定の「読み」を子供に強制する道徳教育として行われるように教科書が作られていることを、具体的な教科書本文の事例をもとに証明していくところはなかなか面白かったです。ただ、著者は「現在の国語という教科の目的は、広い意味での道徳教育なのである。したがって読解力が身に付いたということは、道徳的な枠組みから読む技術が身に付いたということを意味するのだ。」(25〜26ページ)と言って、国語で無自覚に道徳教育を行うことを批判していますが、これは実際に起こっている事態の描写としては少し言葉が足りない気がします。子供たちはそこまで単純に国語の授業を鵜呑みにして「道徳的な枠組み」を内面化するでしょうか? 多くの場合、実際には、「自分ではそうは思えないけど、こう答えておけば○になるんだな」という、一つ浅いレベルでの内面化だけが起こっているのでは。そこでのもっと深刻な不幸は、書物や教師の二重基準、嘘臭さに対する決定的な不信感が生まれることです(まあ、不信感があった方が実は健全だとは思うのですが)。僕自身のことで言えば、小中学生の頃は国語のテストでは正直言って毎回ほぼ100点をとっていましたけど、それは子供心にもうさんくささを感じていた教科書のイデオロギーを内面化していたからではなくて、あくまでもテストの問題の正解としてどういう答えが望まれているのかを判断できていたから(そのレベルでは確かに『道徳的な枠組み』を内面化していたと言えます)だったと思います。何にせよ、現在の「国語」という教科の解体と再編がすぐにでも必要なのは間違いないですね。

国語教科書の思想
国語教科書の思想
posted with amazlet on 05.11.23
石原 千秋
筑摩書房 (2005/10/04)

投稿者 enyu : 2005年11月12日 23:59

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