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2005年01月20日 (木)

『万物理論』読了 (本:2005/01/20)

<読了>
グレッグ・イーガン/山岸真訳『万物理論』(創元SF文庫)

グレッグ・イーガン作品はSF的アイデアの緻密さと論理の跳躍の派手さという点では折り紙付きなので、この作品もそこは期待通りで面白かったのですが、本作は特に彼の倫理観というか主張がよく出ていて、そこが何より素晴らしかったです。『祈りの海』(ハヤカワ文庫SF)でも明確にされていた宗教に対する不信感は相変わらずなのですが、ここではさらに、他者を代弁することの傲慢さや「大きいHワード」としての一面的なヒューマニズムを押しつけることの暴力性への批判、既存のジェンダーとセクシュアリティの枠組みから自由になった生き方の提示(『汎性』)など、近年の社会学周辺でもトピックスとなっている事柄を巧みに取り扱っていて恐れ入ります。この作品が発表されたのが1995年で今から10年も前だというのが信じられないぐらいです。それから、SF的アイデアの方の肝である「万物理論」についての話は、世界内存在としての人間が、同時にその世界を想像(創造)するというのがどういうことなのかという話で、以前に「よくわからない」と書いた永井均『私・今・そして神 −開闢の哲学』(講談社現代新書での議論と通底するものがある感じです。なのでもう一回読んだらそっちも少し理解できるかも。

投稿者 enyu : 2005年01月20日 23:59

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